昨日、わが社の料理長ミーティングにて、「モルトと和の魚料理とのマリアージュ」という題目のコンペを行ないました。
ゲスト審査員にサントリーさんの三鍋部長様(モルトのブレンダー畑一筋の方で、ボウモアのブレンドのもやられていた方)をお招きし、モルトの歴史と楽しみ方を伺いつつの非常に価値あるイベントとなりました。
「モルトはビールを父に、ワインを母に(逆でしたかな)もった酒なんです。」という三鍋部長の言葉が今回のマリアージュのテーマのすべてを語っていたように思えます。
ウィスキーというと、これまた、以前の日本酒のイメージのように、個性としては、どれも同じ。ニッカであろうが、オーシャンであろうが、サントリーであろうが、基本的には同じ。せいぜい価格帯によって「飲みやすい」か、「飲みにくい」という差があるくらい。
「おーいい酒はやっぱり飲みやすいねー。」なんて、銀座の西五番街あたりのクラブと書いたスナックで話す、物知り顔のオジサンたちの顔が目に浮かびます。
ま、大体ウィスキーというのは、そういうイメージで、味についても、そういう平たい、いかに平たいかという「スムース」なんていいますけど、そんな価値感しかなかったように思います。ちょうど、いい日本酒が「水の如し」であったのと同じように。。
しかし、今回のコンペで色々なことがわかりました。
ひとつは料理とともに味わうことでモルトの個性が際立つこと。
それぞれの料理長が、あわせるモルトの個性をきちんとキャッチして、ソースやスパイスに反映してくれました。これによって、それぞれのモルトの個性が、さらに際立ってきました。
「口の中でモルトの個性が爆発する」という三鍋部長の言葉とおり。
例えば、この店の店長が作った
「つぶ貝と根セロリの味噌グレンフィディックソース 甘酢茗荷添え」
吟醸酒のようなグレンフィディックのフルーティーな味わいとシャープな苦味、ほどよい塩味、そしてモルティ&ウッディな味わいに、フルーティさには甘酢、苦味には茗荷、根セロリ、塩味には、つぶ貝、モルティ&ウッディには味噌と酒を構成するすべての要素に食材やソースが呼応し、【爆発】、「今自分はグレンフィディックという酒を精一杯楽しんでいる」ということを実感できる体験でした。シャンパンやシェリーで料理を楽しむのと同じ感覚で楽しめました。
もうひとつは「ソーダでわるのと水で割るのでは酒が変わる」ということ。
ソーダ割りと水割りこれは、全く別の酒。「ソーダ割りにされますか、水割りにされますか」なんて軽い話ではない。日本酒でいえば、ぬる燗と冷、ワインでいえば、シャルドネとソービニヨンブランくらい変わります。
「串自体をモルトでマリネし、スモークする」という画期的なテクで、皆を驚かせた、この店の料理長で、かつ総料理長の作った
「穴子とアボガドのブロシェット モルトスモークピック」
は、料理に使用したシェリーと、山崎12年にマリネ&スモークした串からくる、甘くもスモーキーな香りと穴子とアボガドの組み合わせから、くるオイリーで、リッチな、味わい。そして、隠し味に仕込まれた山葵、醤油といった和のニュアンスは、ジャパニーズウイスキー山崎のリッチな個性を大いに盛りたてました。
この料理にはもちろん山崎12年を合わせたのですが、最初水割りで合わせていたところ、三鍋部長から、ソーダのほうがおもしろいというアドバイスをいただき、ソーダ割りで試したところ、、、
「山崎が爆発」
水割りの時は、アオボガドのオイリーにコーティングされているかのように閉じていた山崎の個性は、ソーダ割りにすることで、そのガスに乗っかってパンとはじけ、アボガドと穴子の味わいの中に、浸透していく感じでした。「息を吹き返した」という印象でした。
さらに、モルトの種類によって料理との相性もかなり変わるということ。
サントリー賞をいただいたこの店の料理長が作った
「的鯛と帆立のカダイフ包み 味噌とドライフルーツのソース」と山崎のマリアージュでは、モルトの種類によって相性も変わることも体験できました。
味噌ドライフルーツソースによる山崎のフルーティーさ、甘さ、ウッディの強調。穴子のマリアージュで魅せた山崎の個性とは、また違う面の「甘くゴージャスな個性」が楽しめました。また、的鯛や帆立といった丸い旨みの魚介類との相性も抜群でした。
が、これをボウモアで味わうと、、これが合わない。
ボウモアの個性であるタンニン、ヨード香の強いピート香が、ソースの甘リッチ感と反発してしまう感じになってしまうのです。
今まで、ウイスキーの個性をどれだけ無視してきたか、恥ずかしながら思い知らされたと同時に、うちの料理長達の酒の個性の感じ方、そして料理への表現の力が、いかに高いかも(ここにあげた料理以外もすべて考えつくされた味わいでした)思い知らされた1日となりました。
人間、知った気になっているのがいかに愚かで、損なのかということを心して、肝に銘じ、今後とも、酒食の楽しみを提供できるよう、皆でがんばっていきたいと思います。
ps 本日発刊の東京カレンダーにモルトと料理のマリアージュ特集として、この店が紹介されます。
事前にご連絡いただければ、ここの料理長の受賞作品「穴子とアボガドのブロシェット モルトスモークピック」と、同じく受賞した、ここの姉妹店の料理長がつくった「つぶ貝と根セロリの味噌グレンフィディックソース 甘酢茗荷添え」もご用意いたします。
この情熱のモルト&ブロシェットのマリアージュをお楽しみください。
最後にサントリー㈱の三鍋部長、粉川さん、お休みのところ、本当にありがとうございました。
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